ランチの平均客単価1200円以上。
それでも連日大行列ができる飲食店があるのを知っていますか?
東京ではおなじみの牛たんのお店。
東京・横浜に34店舗展開する「牛たん・とろろ・麦めし専門店 ねぎし」です。
このお店、不振が噂される外食産業の中にあって、連日大行列ができています。
圧倒的なリピート率と高い顧客満足度を誇る当店は、あのトヨタまでもそのノウハウを参考にしているほどです。
今回はねぎしの人気の秘密について書いていきたいと思います。
仙台男子が愛する絶品の味
“ねぎし”は他店とは少し異なる違うポジションで展開してきました。
どう違うかと言うと、ねぎしの牛たんは焼肉屋で食べる薄く切った牛たんではなく、厚く切った豪快さがウリの『仙台牛たん』です。
そんな仙台男子が愛する絶品の味、どんな酒にも相性抜群のおつまみメニューの『仙台牛たん』をお昼の"定食メニュー“として大ヒットさせたのが“ねぎし”です。
居酒屋では集められなかった女性客の獲得
定食メニューにすることにより居酒屋では集められなかった女性客をランチから集めることに成功しました!
じつに客層の約半数(45%)が女性客です!
なぜ女性からの支持が高いのでしょうか?
その秘密はもともと低カロリーだった牛たんを麦めしやとろろを付けることによりヘルシーのメニューに変えたからです。
"たん“の中でも貴重な"しろ“と言われる部分だけ厚切りした"しろたん”とそれを囲むのは旨みたっぷりアツアツのテールスープ、牛たんと相性抜群の麦めし、絶妙の辛さの味噌なんばん、そしてとろろ・・・麦めしはおかわり自由です。
この絶妙の組み合わせで、ヘルシーでありながら手に届く贅沢メニュー!
並んででも食べたいと感動を呼ぶ一番メニューとなりました。
その価格は1530円!!このランチ価格で顧客に安いと言わせているのです。
ねぎしの牛たんのおいしさ秘密
ねぎしの牛たんはなぜ美味しいのでしょうか?
その理由は2つです。
一つ目はセントラルキッチンでは厳選された牛たんを専門スタッフが"手切り”で一番食べやすい大きさ1切れ35グラムに揃えていることです。
近年、機械で切るお店が少なくないなかスジなどを丁寧に取り除き、下処理の手間を惜しみません。
これは機械でやるより当然コスト高になりますが、これがねぎしの一つ目のこだわりです。
二つ目は牛たんのおいしさを決める"焼きの技術“に徹底的にこだわっているところです。
ねぎしでは社内で認定された焼き専門スタッフが焼き場の担当をします。
経験豊富の彼らが炭火を使って、肉汁たっぷりでやわらかい絶妙の焼き加減にしあげていきます。
ほんのり"ピンク“の中心部分が最高の食感の証なのです。
1年1店舗の出店にはワケがある
牛たんで顧客の心をつかんだ"ねぎし“は年々売上は右上がりで伸びていき現在34店舗で年商56億円!
1店舗の平均月商は1372万円の大繁盛店となっています。
これだけの大繁盛店を作りながら、店舗数は創業34年間で34店舗!
1年1店舗とは人気店とは思えない出店スピードです!
これは"ねぎし“いわく、店数ではなく一店一店、質の高いよいお店をつくっていき地域社会にお役立ちしていくことが目的だからです。
そのような質の高い営業をするには"人材“、つまり、ねぎしの出店は人材ありきで、人が育たなければ出店しないのです。
言い換えれば、人の成長を待って出店しているのです。
そうやって時間をかけて育った人材が熱狂的なねぎしファンを作っていったのです。
ねぎしの究極の企業戦略が親切
ライバル店を寄せ付けないねぎしの圧倒的な強さは、牛たんだけではなく驚くほど親切な接客サービスもその理由一つです。
ねぎしは親切こそが最大の評価基準なのです!
- 客が寒そうな仕草をすればすぐに駆け寄り温度を調節する"親切”
- 女性客にはあえて小さな声でおかわりを聞く"親切”
- 電話がかかってきて外に出た顧客の冷めたごはんとスープを、温め直す"親切”
このように顧客のちょっとした変化も見逃さないサービスのプロたちが最高の"親切“を実践していきます。
なぜこのような"親切“が可能になるのでしょうか?
それは特別驚くことではなく他店でもよくあるアンケートはがきです。
この流れは卓上に設置されたアンケートはがきが本社に届き、そのお褒めの声を全店で共有する仕組みがあることと、褒められたスタッフを表彰する仕組みだけです。
たったこれだけなのです。
ただアンケートはがきを最大に機能させる仕組みが"思い“だとねぎしは言っています。
『究極の企業戦略が親切』
これがねしぎ躍進の秘密です。
親切とは相手を思う気持ちでいかにお客様のために尽くすことができるかです!
「親切=気付き」でこれが目配り・気配り・心配りです。
ねぎしは、お客様の喜びと満足を得ることでそのために毎日お店に来て仕事をしているのです。
これを繰り返し、繰り返し従業員に伝えているのです。
巷にある飲食店のアンケートはがきが機能しない理由は、"思い“があるかどうかだけです。
いくらスキルが高くても思いのないスキルは活きてこないし、お客間の喜びと満足につながらない。
思いがあって初めてスキルが活きてくる!
いずれにせよ、ねぎしの接客ノウハウを、あのトヨタまでが参考にしていると言うのでそのレベルの高さがわかります。
不振が噂され、人材確保もままならない外食産業で、低い離職率と高い顧客満足度を生み出す「ねぎし」の秘密は「親切」にあったのです。
店長30人が経営を決める
牛たんは“焼き”が命!
美味しい牛たんのポイントは“炭の温度”と“焼き時間”の二つです。
ねぎしでは他の外食企業にはない仕組みがあります。
それが焼士の認定試験です。
試験では実践さながらに次々入る注文を聞きながら焼き始める肉の優先順位と焼き加減を判断して正確に仕上げていきます。
審査するのはベテランの店長たちです。
つまりねぎしの焼士は厳しい試験に合格した社員のみ“その称号”が認められるのです。
そしてこの焼士制度は、現場の店長の発案ではじまりました。
ねぎしでは現場発の仕組みが他にもあります。
それがクリンリネスコンテストです。
全店の清掃状況をチェックする仕組みです。
わずかなホコリも見逃さない厳しい審査です。
このコンテストも店長たちの発案ではじまりました。
このように現場で計画して実行する仕組みなので店長たちのやる気が違います。
現場に権限を任せるのが“ねぎし流”です!
モチベーションの高い現場だからこそさまざまな改善が生まれるのです。
自分たちで考え、自分たちで行動するからこそ他人事ではなく我が事になる!だからこそやり甲斐が圧倒的に違う。
ライバル店を寄せ付けないねぎしの圧倒的な強さは美味しい牛たんや親切な接客サービスだけではなく、現場店長の高いモチベーションに支えられているのです。
40歳のとき仙台のある店で事件が起きた!
なぜねぎしの現場は高いモチベーションに支えられているのでしょうか?
このような独自の経営を行っていくキッカケになったのは根岸社長の苦い経験からでした。
根岸社長は30歳のころは地元で飲食店経営をしていました。
その頃は東京でヒットしている業態をそのまま地元に持ってくるという手法で次々と人気店を作り、わずか数年で20店舗を構えるまで会社を成長させたのです。
ところが40歳のとき、仙台で作ったあるお店で事件が起きました。
それは1年前に東京から持ってきた大皿料理のお店です。
このお店はそれまでと同じで、ものめずらしさから大成功を収めていました。
ところがある日、根岸社長がお店に顔を出すと、開店時間が過ぎているのになぜかシャッターが閉まったままでした。
そしてお店のスタッフ全員と連絡が取れない!!
いったい何が起きたのか根岸社長にはまったく理解できなかったと言います。
しかし理由はすぐにわかりました。
それは100メートルも離れていないところにオープンしたほとんど同じ業態の新店に、店長もろともスタッフ全員引き抜かれていたのです。
あまりにもビックリして商売は1ヶ月くらいできなかったと言います。
結局、お金で動く人は次もお金で動く。
従業員たちとそのような関係しか築けなかった自分のやり方に根岸社長ははじめて自分が悪いと気が付いたのです。
そして考え続けました。
結局はその場の利益ばかりを追いかけても商売は永く続かない。
永く続けていくためにはどうすればいいか?
それが、現場に権限を任せる経営だったんです。
従業員たちが会社のためではなく、自分たちで考え、自分たちのために働く。
店長を中心に店を我が事として、「自分のこと」として参加して、「いい店を全員が作りたい」と思い、その過程にいいチームワークができる。
そんな経営を目指したのです!
そしてすべての店を手放して、東京で再出発することを決意しました。
それからオープンしたのが1981年に開業した"牛たんねぎし1号店“です。
人は城、人は石垣、人は堀
このねぎしの話を聞いたとき、真っ先に思い出したのが武田信玄の言葉です。
戦国最強と言われた武田軍総大将、武田信玄はこのような言葉を残しています。
人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり・・・
この言葉の意味は、どれだけ城を強固にしても、人の心が離れてしまえば世の中を収めることができない。熱い情を持って接すれば、強固な城以上に人は国を守ってくれるし、仇を感じるような振る舞いをすれば、いざという時自分を護るどころか裏切られ窮地にたたされる、という意味です。
このねぎしの話は人不足に苦しむ多くの業界でヒントとなる話ですね。
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加納 聖士