2015年9月4日の日経MJに東京ディズニーランド長い行列「もう待てない」
夏休み入園者減
高齢化・娯楽多様化が背景
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という記事が掲載されました。
リード文は以下の通り・・・
東京ディズニーランド(TDL,千葉県浦安市)に異変が起きている。東京ディズニーシー(TDS)と合わせた夏休みの入園者数が減り、2016年3月期通期でも減少する見込みだ。運営会社は暑さを理由にするが、競合施設は軒並み好調。異変の一因は「待ち時間の長さ」だ。長い行列は人気の証しだが、少子高齢化や娯楽の多様化もあり、消費者は「もう待てない」。テーマパークの王者は曲がり角を迎えている。
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記事の内容を要約しますと、
- 2015年の夏休み期間のTDLとTDSを合わせた入園者数は当初計画も前年同期実績も下回っていること。
- オリエンタルランド側は、人気ショーの落ち着きや猛暑を理由に挙げているが、同条件での競合相手は好調だったということ。
この2点が主な論拠です。
競合相手のこの夏の数字をあげると、例えばユニバーサル・スタジオ・ジャパンの8月入園者数は7%増の142万人。
東京ドームシティアトラクションズの乗り物利用者数は前年比4%増の延べ114万人。
ハウステンボスやサンリオビューロランドなどもこの夏の集客数は増えたようです。
今回は、この記事の主張について、いろいろな角度で検証をしながら私の見解を述べていきたいと思います。
東京ディズニーランドの混雑状況を知りたいというニーズ
ディズニーランドの混雑状況がどれほどのストレスになっているか調べるために、まずGoogle AdWordsのキーワードプランナーで「ディズニーランド」というワードの検索数を調べてみました。
検索ボリュームを高い順に並べますと
- 混雑(39)
- ホテル東京(37)
- チケット(28)
- 宿泊(25)
- シー(20)
- 周辺ホテル(15)
- 格安ホテル(10)
と圧倒的に「混雑」という検索ワードで探す人が多いことがわかります。
これをワードをさらに細かく見ますと
- 東京ディズニーランド混雑予測(18,100件)
- 東京ディズニーランド混雑(12,100件)
- ディズニーランド混雑状況(3,600件)
- ディズニーランド混み具合(2,900件)
- ディズニーランド混雑予測 結果(2,400件)
- 東京ディズニーランド混雑状況(1,300件)
- ディズニーランド混雑情報(1,000件)
と、1ヶ月間に4万件以上の方が混雑を回避するために、ネットからその情報を調べているのです。
つまりディズニーを楽しむゲストにとって、可能なかぎり混在を回避したいニーズは極めて高いということです。
2002年以降の2パーク合算 入園者数
ディズニーランドの混雑状況が過去10数年でどのように推移していったのか調べてみることにしました。
まずは2002年以降のTDLとTDSの2パーク合算入園者数です。
※2001年の9月4日にTDSが開園。1年間の総数で比較したかったためあえて除外しました。
営業日数が違う年度がありますので、各年度別の数字を1日平均の来園数に置き換えました。
これを見るとわかりますが02年から09年までの8年間の1日平均の来園数は7.0万人です。
この期間で一番来園数が多かったのがTDLの開園25周年があった08年の7.5万人です。
そしてそれ以降、一気に伸びているのが、13年の8.6万人です。
この年が開園30周年となるのです。
グラフにするとこの伸びがさらにわかりやすくなります。
グラフで見ればわかると思いますが、08年から09年のかけては25周年祭の反動から翌年0.4万人減っていることがわかると思います。
しかし14年のときは13年の30周年の反動はなく、逆に過去最多入園者数を8万人更新して過去最高来年数を記録したのです。
ではなぜ14年は、集客減にならずに、過去最高来年数となったのでしょうか?
今後10年間で5000億円の投資計画を発表
2015年7月30日に発表された、オリエンタルランド2016年3月期第1四半期の売上高は1032億9400万円、昨年よりわずか0.9%減でした。
オリエンタルランド側からすればこの着地はほぼ想定内です。
なぜなら繰り返しますが昨年度はサプライズイヤー
だったからです。
昨年は30周年を終え、反動減が予想されていたディズニーリゾートの集客が予想を上回り、過去最多入園者数で着地したのです。
これは「プロジェクトマッピング」「アナと雪の女王」の2つの新イベントが反動を打ち消した格好でした。
今年度に入り若干の息切れ感は否めないものの、短期的な業績だけで見ると大切なことを見誤ります。
なぜならオリエンタルランドは少なくとも10年スパンで投資戦略を練る会社だからです。
そのためすでに次の成長フェーズを見据えて戦っているのです。
現在、2023年までの5000億円の投資計画が発表されており、2500億円を投資して新しいテーマポートを3つ増設することが盛り込まれています。
ディズニーシーに「アナと雪の女王」のエリア(北欧の港町)、ランドに「美女と野獣」「ふしぎの国のアリス」の各エリアができる予定です。
当初、これ以上の拡張は土地の問題で難しいと思われていました。
とくにシーのほうは多少余裕があることが知られていましたが、ランドは限界と思われていたからです。
それに今回、挑戦しようとしているのです。
儲かっているのに今年4月になぜ値上げしたのか
東京ディズニーリゾートの入場料が2015年4月からが値上げされました。
運営会社のオリエンタルランドは、TDLとTDSの1日入場券に相当する「1デーパスポート」を、大人と中人(12~17歳)は500円、小人(4~11歳)は300円値上げしたのです。
これにより、1デーパスポートは大人6900円、中人6000円、小人4500円(いずれも税込み)となりました。
TDLとTDSの2014年3月期の入園者数は合計で3130万人。
テーマパーク事業の売上高は3909億円、営業利益は971億年とそれぞれ最高を記録しました。
それにもかかわらず、2014年4月の消費増税から1年後に再び値上げ。
強気とも思える理由はどこからきているのでしょうか。
オリエンタルランドは昨年4月に発表した「2016中期経営計画」(2015年3月期~2017年3月期)で、テーマパーク事業に5000億円規模の新規投資を10年かけて行うと発表しました。
TDLのファンタジーランドの面積を現在の2倍に拡張したり、TDSに新しいテーマポートの開発を検討しているのです。
つまり今回の値上げは、今後増えていく投資の費用に充てられるのです。
ここで最初のテーマに戻りますが、ディズニーランドはいつ行っても混雑しています。
ディズニーランドを訪れる人たちが心から望むのは、異常ともいえる混雑状況を解消し、ストレスの少ない状態で楽しめるようにしてくれることなのです。
だからこそ新たな投資はそれに活用させようとしているのです。
つまりこのタイミングでさらに値上げして、この費用をこれから先10年のさらなる成長に活用しようというわけです。
日経MJの記事に対しての私の見解
ここでもう一度、日経MJの記事を読み返したいと思います。
東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)に異変が起きている。東京ディズニーシー(TDS)と合わせた夏休みの入園者数が減り、2016年3月期通期でも減少する見込みだ。運営会社は暑さを理由にするが、競合施設は軒並み好調。異変の一因は「待ち時間の長さ」だ。長い行列は人気の証しだが、少子高齢化や娯楽の多様化もあり、消費者は「もう待てない」。テーマパークの王者は曲がり角を迎えている。
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ここまで述べてきたことから上記の記事の見解を述べていきます。
一つ目に「TDLとTDSと合わせた夏休みの入園者数が減り、2016年3月期通期でも減少する見込み」という記事に対しては、単純に13年と14年が特別によかったということです。
オリエンタルランドも想定していた範囲内なのでまったく心配していません。
二つ目に「運営会社は暑さを理由にするが、競合施設は軒並み好調」という記事に対しては、今年の暑さは異常だったのです。
なぜなら、今年は8月7日の時点で最高気温が35度以上の猛暑の日が、8日連続つづきました。
このような猛暑日が連続8日続くのは、1875年以降初というほどです。
さすがにこれだけの暑さが続けば、ディズニーファンも今年はあえてTDLやTDSを避け、待ち時間の少ない競合相手に流れるのも無理もありません。
涼しくなった8月後半の週末は、例年並みの集客に戻ったことも考えるとこれも問題ない範囲だと思います。
三つ目に「長い行列は人気の証しだが、少子高齢化や娯楽の多様化もあり、消費者はもう待てない」という記事については、2001年よりパーク内が広がっていないのに、入園者が増えているということは、待ち時間が増大していることは事実です。
だからこそ、オリエンタルランドはこの改善に対して、これから10年かけて、テーマパーク事業に5000億円規模の新規投資をしてTDLのファンタジーランドの面積を現在の2倍に拡張したり、TDSに新しいテーマポートの開発して待ち時間の解消に努めようとしているのです。
それを見越しての2015年4月のチケットの値上げだったのです。
以上のことから2015年の夏休み期間の入園者数の減少は、日経MJが語るほど深刻ではありません。
短期的な業績だけで見ると大切なことを見誤ります。
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