日本の企業は約600万社あると言われています。
そのなかで100年以上続く老舗企業は約1万5200社(0.25%)で、さらに200年以上続いている会社が3113社、500年以上続いてきた会社は124社、1000年以上続いてきた会社は19社あるそうです。
2008年に韓国銀行がまとめた報告書によれば、200年以上の老舗企業は世界41か国で5586社が確認されていますので、その56%は日本の老舗企業が占めています。
その点から見ても日本は「世界に冠たる長寿企業国家」なのです。
そこで今回は、「三方よし!近江商人に学ぶ、日本の長寿企業の7つの習慣」と題して、その共通点をまとめてみました。
企業の平均寿命
東京商工リサーチが調査した結果によりますと2014年の倒産企業の平均寿命は23.5年だったと発表しました。
企業倒産件数は、6年連続で前年を下回り、24年ぶりに1万件を割りました。
この背景には円安の進行、原材料・仕入価格の高騰、人手不足など中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いています。
いずれにせよ企業の寿命は人間の寿命よりもはるかに短いのです。
この平均寿命23.5年と短い企業寿命のなかでも日本には世界と比較しても長寿企業が多いです。
日本には創業200年以上の企業が3,113社あります。
これは世界一です。
2位のドイツが1,563社で3位のフランスになりますと300社になりますのでその差は歴然です。
近畿地方には、長寿企業が多い
「灯台もとくらし」という諺があります。
日本のグローバル化が遅れていると言われていますが、逆に日本にしかない誇り高い企業文化があることを、私たちは忘れてはいけません。
その象徴ともいえるのが、創業1000年を超える長寿企業は日本に現在19社あることです。
とにく近畿地方には、長寿企業が多いです。
近畿地方といえば飛鳥時代から平安時代までの王城の地で、現在も関東地方に次ぐ日本第二の都市圏・経済圏です。
中世よりこの地の伊勢国と近江国からは 有能な商人が輩出され、「伊勢商人」「近江商人」として名を馳せました。
世界最古の企業は日本にある
世界最古の企業は、大阪の金剛組(こんごうぐみ)です。
金剛組は、聖徳太子の命を受けて西暦578年に百済の国から招かれた3人の工匠のうちの一人、金剛重光によって創業されました。
それ以来、四天王寺の宮大工として1400年以上の歴史を持っています。
金剛組は、創業から1955年の法人化を挟んで2005年まで金剛一族が経営してきましたが、同年11月より高松建設(現高松コンストラクショングループ)の子会社(現在は孫会社)へ移行しています。
そのほかの創業1千年超えの日本の主な長寿企業は以下の通りです。
長寿企業に共通する7つの習慣
第一次世界大戦の開戦から昨年で100年経ちました。
この間、幾度となく戦争が起きたり、リーマン・ショックのような金融危機が生じたり、阪神大震災や東日本大震災などの自然災害が発生したりと、多くの困難が訪れました。
その困難を乗り越え、企業として生き残ることができた長寿企業の特徴、ひいては“強み”とは何だったのでしょうか。
調べてみますと近江商人の考えに近いものでした。
そこで三方よしの近江商人の考えである長寿企業の「7つの習慣」を順に述べていきます。
特徴1 経営理念やミッション、ビジョンが明確である
長寿企業には共通する1番の特徴が理念やミッションが明確なところです。
理念とは、創業から事業の終焉まで一貫して流れる創業精神のようなもので、ミッションは企業あるいは事業の存在目的と、達成するための「信念」となる根本的価値基準を示したものです。
そしてビジョンは、その使命を全うするための経営方針や戦略の拠り所となるもので、到達点または経営上の「ありたい姿(理想像)」です。
長寿企業は理念、ミッション、ビジョンが明確で、数百年に渡りブレがありません。
つまり世の中で果たして行くべき自社の役割、あるいは使命をハッキリと認識し、常に徹底的に追求しているところです。
具体的には事業の目的は何か、失ってはならないものは何か、など自社が目指していく価値観や基軸が明確です。
ここが明確だからこそ、経営者あるいは事業を継ぐ後継者として心がけるものは何かということについて明快な指針があり、実践することがあります。
指針とは、のような形でハッキリ書かれたものを残しているところもあれば、口伝・秘伝のように後継者だけに代々伝えていくというようなところもあります。
あなたの会社がこれから先、百年企業を真剣に目指していかれるならば、理念やミッション、ビジョンを抜きにこの偉業を達成することは不可能です。
特徴2 人を大切にする経営、いわば人間経営に力をいれている
長寿企業は企業内教育に熱心であり、長期的視点から人材の見極め、登用が行われています。
そのため人材育成は自社内で非常に丁寧に、時間をかけて行われています。
なぜ人を大事にするのでしょうか?
それは予期できぬ危機への対応のためには人が必要だからです。
長寿企業は、長い歴史の中で、大きな危機に何度も遭遇してきました。
こうした危機は事前に準備しておくことができません。
だからこそ予期せぬ危機に対応するために、強靱な人材を育てているのです。
中国には、「来年のことを考えれば金を残せ、10年先のことを考えれば土地を残せ、100年先のためには人を残せ」ということわざがあります。
企業の独自の力の源泉となるのは、企業の中に蓄積された技術やノウハウです。
それ多くは人によって担われます。
だからこそ、独自能力を残すためには人を育てなければならないのです。
あなたの会社がこれから先、百年企業を真剣に目指していかれるならば、人材教育に力を入れていかなければなりません。
特徴3 愛社精神を持っている
長寿企業の特徴の3番目は、社員全員が、愛社精神を持っていることです。
愛社精神を持っているからこそ、おのずと質の高い仕事をすることができます。
人は自分が愛する仕事に対しては情熱をいかんなく注ぐことができます。
1日8時間義務的に仕事をするか、仕事が終わってからも製品の改善方法を考たりして、1日16時間、頭脳労働するかでは大きな違いが出ます。
好きな仕事というのは、趣味に没頭するかのようにハマることができます。
だからこそ経営危機に陥ったときでも、経営者だけが奔走するのではなく、社員一丸となって困難に立ち向かうことができるのです。
サッカーを観ても分かるように、日本人は個人プレーよりもチームプレーで戦う方が能力を発揮できる場合が多いです。
かのヤンキースに所属していた松井秀喜氏も、インタビューで事あるごとに「個人の成績よりチームが勝つことが大事だ」と常々語っていました。
この言葉の本質はチームのために頑張った方が結果的に自分もいい結果を出せるということなのです。
長寿企業は愛社精神を持って、自分の成績よりも企業が存続することを一番に考えて行動しています。
あなたの会社がこれから先、百年企業を真剣に目指していかれるならば、社員があなたの会社を本気に好きにならなければ達成不可能です。
ですから人件費をコストとしてではなく、将来への投資として捉えていく必要があるのです。
特徴4 社会に貢献するという想いが強い
長寿企業は事業を通して社会に貢献していくという想いが極めて強いです。
自社の役割が明確なので、何をしなければならないかという目標が明確です。
目標が明確だからこそ余分なことに手を出さず、本業を極め続けます。
そして社会への貢献(世間よし)がゴールなので社会の変化に対応して自社を変えることもできます。
これこそ長寿企業の秘訣なのです。
働くというのは傍(=周り)を楽にすることであり、奉公というのは公に奉ずることです。
そしてまた「仕」も「事」も「仕える」と読むように、仕事というのは「天に仕える」ことなのです。
自らの仕事を天に仕える人間成長の場と言い切れるからこそ、長寿企業が長寿力を有してきた理由なのです。
経営の基本は短期的な利益優先、金儲けを優先することではなく、社会に貢献することによって会社が長期的に繁栄していく力になるのです。
二宮尊徳の教えで有名な「たらいの水の話」というのがあります。
水を自分のほうに引き寄せようとすると向こうへ逃げてしまいますが、相手にあげようと押しやれば自分のほうに戻ってきます。
だからまずは社会に貢献する、公に奉ずる、傍(=周り)を楽にすることが先なのです。
あなたの会社がこれから先、百年企業を真剣に目指していかれるならば、いかに社会に貢献できるか、利益抜きに追求していかなければなりません。
特徴5 顧客志向の徹底で利益を追求しない
企業は大小を問わず、顧客の存在があってはじめて成立し、持続できます。
だからこそ長寿企業は利益に眼がクランだり、老舗に胡座をかいて顧客のことをおろそかにすることを深く戒めます。
長寿企業に共通する考え方は、自らの役割を果たし顧客に貢献すること、社会に貢献することです。
この考えを利益よりも重視します。
もちろん企業は利益を上げなければ倒産してしまいます。
しかし、利益ばかり追求すると顧客より企業が優先となり、結果的に顧客が離れて倒産してしまうのです。
ビジネスとは顧客の利益と企業の利益の微妙なバランスで成り立っています。
このバランスが崩れると、どんなに良いサービスでも長続きしません。
長寿企業は大儲けしていませんが、堅実に利益を出している企業が多いのはこの理由からです。
あなたの会社がこれから先、百年企業を真剣に目指していかれるならば、真の顧客志向を目指していかなければならないのです。
特徴6 長寿企業は上場せず
一般的には、株式会社は、企業を永続的事業体として存続させるための重要な手段だといわれています。
長寿企業は、法制度としての株式会社の制度を採用していますが、そのもっとも大きな長所である上場による資金調達はしていません。
なぜなら上場によって資金を得てしまいますと、無駄な投資をしたり、無理な拡張を図ったりしがちだからです。
そのため長寿企業は財務政策に関しては保守的なところが多いです。
資金の調達よりも、資金の始末が重視されるからです。
ここでいう資金の始末とは、お金を何に使うかということを大切にしているのです。
つまり企業だけではなく、個人もそうですが、お金は入口よりも出口が大事です。
自分の欲望を満たすためにお金を使うのか、世のため人のためにお金を使うのかという論点です。
そのため長寿企業は限られた資金を費用対効果を考えながら大切に使ってきました。
このように自己資金を大切に使う風土があるので資金需要が少なく、さらに資金の始末が重視されるので融資や投資という形の外部資金に頼らなかったのです。
この始末という考えは近江商人の知恵なのです。
あなたの会社がこれから先、百年企業を真剣に目指していかれるならば、資金調達に関して保守的になり、資金の始末を大事にしていく必要があるのです。
特徴7 本業を極めながら、変化を恐れず絶えざる革新を目指す
長寿企業は過去の成功体験に縛られません。
つまり社会の変化、顧客のニーズの変化に合わせて変えていくべきものと、変えてはいけないものとを見極め、時として思い切って自らの事業を変えていきます。
例えば近江商人の「三方良し」はお客様と自社だけでなく、世間にとっても良いことを目指すことです。
つまり世間にとって良いことを目指してきたので、世の中の動きに合わせた自己変革を促し、経営革新をすることに抵抗がないのです。
老舗企業の代表である虎屋さんは次のように言っています。
「伝統とは革新の連続である」という信念のもと日々努力をし、時代の流れを読みつつ常に前進しなければならない
本業を極め、社会の変化に合わせて経営革新を続けてきたからこそ長寿企業になれたのです。
彼らは時代の変化に対して敏感です。
そして変化に対応しながら、自社の本業を極め、それを基軸としています。
つまり伝承された技術やノウハウが利用できる範囲でしか変化していないのです。
あなたの会社がこれから先、百年企業を真剣に目指していかれるならば、世間にとって良いことで自社の本業の技術やノウハウを使えるのなら、積極果敢に変化して挑戦していかなければなりません。
以上、7つが長寿企業に共通する「7つの習慣」です。
当たり前のことを愚直にやり続けることが長寿企業になるコツです。
長寿企業には日本人の独特なビジネス観・企業観がある
日本人はビジネスの目的を単なる金儲けではなく、社会的な意義があるものと考えてきました。
だからこそ長寿企業の社員は、職場で自己実現、自己充足が得られることを期待して仕事しています。
お金は大切ですがお金よりも大切なことは、自分たちがいかに充実した職場人生をそこで送れるかということです。
この考えに立てば、従業員は会社にそれなりの愛情を感じるようになります。
このような日本人のビジネス観・企業観こそ、企業の永続を促す大切な考えなのです。
まとめ
私たちはこれまで大量のモノに囲まれ、さらに新しいモノを求め、少し古くなったモノは惜しげもなく捨てるといった生活を繰り返してきました。
しかし、将来の世代のためには、こうした大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会のあり方を見直さなければならない時期にきています。
だからこそ、わが国に数多く残る長寿企業の生き方は、世界人類がいま向かっている新しい産業社会や企業のあり方に、多くの示唆を与えます。
なぜなら、長寿企業こそが持続可能な社会に向けて最も重視すべき「心のあり方」を持っているからです。
今回は長寿企業に共通する「7つの習慣」を紹介しました。
皆さんの会社の永続のためにも、ぜひこの考えを習慣化させましょう。
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