【多店舗展開】で陥りがちな5つの失敗
多店舗展開にやりがちな5つの失敗
多店舗化には5つの魔物が住んでいると言われています。
その5つとは
- 距離の魔物
- 「ハコ」という魔物
- 社内を空洞化する魔物
- 支店経営の魔物
- 立地の魔物
で、この落とし穴は大小問わず、事業を拡大していくとき共通して現れてきます。

今回は、多店舗展開にやりがちな5つの失敗例を、魔物に置き換え説明していきます。
多店舗展開の仕組みとは、言い換えるのであれば儲かる仕組みをどう構築させていくかです。
そのための出店戦略、人件費コントロール、売上をより早く起動に乗せるやり方、内装や出店コストの抑え方、資金調達や資金繰りも大事になります。
今回はその中でも極めて重要になる5つに特化して、失敗事例を紹介していきます。
距離の魔物
1号店が繁盛したら、次は2号店目となりますがこのとき成功させる最大のポイントになるのが1号店目と2号店目の物理的な距離です。
飲食店や美容室は立地産業と言われるくらい成功は立地に左右されます。
2号店目をすばやく軌道に乗せるためにも店舗選びは重要です。
しかしこの時、2号店目を出店したいのになかなかいい物件が出てこなく、なかなか開業できないというケースはとても多いです。
この時、一番最初の魔物は既存店舗から距離が離れているけど「売上が上がるいい店舗物件があるぞ」とあなたにささやきます。

その物件が魅力的であればあるほどあなたの心は揺らぎます。
多少の距離ならなんとかなると思って出店すると、多店舗展開における最大メリットであるシナジー効果(相互効果)が効かなくなり、新店舗の売上が上がらないか、既存店の売上が下がるか、どちらかの現象が起きて、全体として利益率を落としてしまい儲からなくなります。
仕入・物流・管理・人件費・コミュニケーション・フォローなど、本来ならシナジー効果が大きく現れるはずの要素が、この魔物にかかると効果が出なくなります。
さまざまな誘惑があっても、シナジー効果が本当に出せるかどうかを基準に、出店場所を選ぶ必要があります。
多店舗展開には店舗単体で儲かる仕組みを作るのではなく、面による儲かる仕組みを作れるかがポイントになるので、なるべく1号店目から距離の近い場所に出店するようにしてください。
この判断を誤ると赤字が続き、早期閉店、最悪のケースは1号店の利益を食ってしまって倒産の可能性も出てきます。
「ハコ」という魔物
「ハコ」というのは店舗の規模のことです。
ここに潜む魔物は、「どうせなら店舗は大きいほうが儲かるよ」とそそのかします。
同じ業態で出店するのだから、人員を増やしてお客様を呼び込んだ方が早く軌道に乗ると思わせるのです。
しかし営業時間5人で運営する店を多店舗展開していくのと、10人で運営する店を多店舗展開していくのとでは、マネジメントに必要なスキルに大きなギャップが出てきます。
15人、20人と人数が増えるだけで多店舗化経営はまったく別世界となります。

5人程度の少数精鋭でやっていく店には、社長もスタッフも一体になってともに戦う土壌が生まれやすく、社長が直接スタッフを指導することに抵抗感は生じにくいのです。
しかし20人規模の店では、店舗のもとに店舗独自の組織が固まり、社長が店長を介さずにスタッフを直接指導することをためらってしまうことが多くなります。
店長への権限移譲はよいことではありますが、指揮系統が5人規模でのマネジメントとはまったく違ったものになるため、店舗運営が悪い方向に向かうケースが多いことを、頭に入れておかなければなりません。
早く軌道に乗せたいのであれば、組織として大規模店舗を運営できる仕組みがまだ成熟しないうちに、実力と不釣合いに大きな「ハコ」に手を出すべきではありません。
社内を空洞化する魔物
この魔物は社長やマネージャークラスの人材に「難しい仕事はスタッフにやらせるより自分でやったほうが速いだろう」とささやきます。
確かにその通りでしょう。
多店舗展開をしていくと多くの企業が家業から企業に脱皮するときが訪れます。
その時に多くの企業が失敗する最大パターンは「ホウ・レン・ソウ」です。
組織らしくするために、報告・連絡・相談を強化させることで、現場力が次第と落ち始めていきます。
というのは現場でプレーヤーとして成果を上げてきた社長自身と、同様の体験をしてきた幹部社員からしてみますと、現場に「こうすれば儲かるよとか、こうすれば利益が上がるとか、こうすれば売上が上がる」などと細部にわたり、経営のこと、過去の成功体験、経費管理、集客について手取り足取りアドバイスし始めます。

もちろん目の前の課題解決にはそのほうがよい場合がありますが、その頻度があまり高いと、現場のスタッフは何も考えずに疑問を持たずに指示に従う癖がつき、自分で考え、解決する風土が生まれにくくなってしまいます。
スポーツの世界では、一流のプレーヤーが一流のコーチや監督になれるわけではないとよく言いますが、店舗経営でもその通りなのです。
また、現場で叩き上げて実績を上げてきた店長は、往々にして全部の店舗の店長をやりたがります。
その場合も似たようなことが起こります。
その人が複数店の店長として采配をふるうことで、下につく人のキャリアパスを奪い、店舗昇進などの上位職位を目指すのを諦めさせることになりかねないのです。
キャリアパスに限界があるとなれば、士気が落ちるのは当然です。
つまり、社長や一部の優れた社員の配下に、言われたことをただやるだけの従業員がいて、中間には誰もいないという「社内の空洞化」が起きて、中間の社員が育たなくなる危険があるのです。
現場の従業員に適切に権限を委譲し、誰もが上級職位を目指せるようにすることが大切です。
支店経営の魔物
コンセプト、メニュー、店舗規模、単価のそれぞれが異なる複数店舗を経営することを「支店経営(マルチブランド展開)」といいます。
ここに魔物がいます。
魔物は、例えばこんな話をします。
「飲食業界の支店経営で成功している上場会社のダイヤモンドダイニングは『100店舗・100業態』を目標に掲げて躍進し、現在40以上のブランドを運営して大成功しているぞ。お前もいろんなタイプのお店を出したほうが面白くないか?」
おそらく面白さという意味では、多様なブランドを手がけたほうが、社長にとっては面白いでしょう。
しかしそれは大変危険です。
ダイヤモンドダイニングは店舗ビジネスに携わる誰もが注目する会社ですが、非常に稀で、特殊な成功例です。

私は、外見的には別プランドであっても、裏で動いている店舗経営の仕組みは多くが標準化されており、業態としては非常に均質なのではないと見ています。
その2面性をうまく総合しているところに優れた経営手腕があり、それは簡単に真似できるものではありません。
一般には支店経営では15店舗までが限界と言われています。
フランチャイズで成功している本部でも2つのブランドをヒットさせているケースは極めて稀です。
ハイリスク・ハイリターンを夢見る人は挑戦してもよいですが、失敗したら取り返しがつきません。
それよりは、最初の店舗で成功した業態・ブランドで、同等の規模の店舗で出店させていくほうが、地味で安全・堅実なやり方です。
これを「チェーンストア経営」といいます。
10店舗に増やすまでは、高校野球のトーナメント戦と同じように、1敗も許さない戦いが続きます。
負けないためには、同一業態の多店舗化をしていくことをオススメいたします。
立地の魔物
5店舗以上の展開をしていくと、なかなか同一エリアへの出店が難しくなり、隣接した別のエリアへの展開を考えざるを得ないことがあります。
このとき対象エリアに競合店舗がすでにあると、業態が違う別ブランドの店を出したくなるかもしれません。
このとき、立地の魔物は「進出する新しいエリアでは新ブランドで勝負しよう」とそそのかします。
これにうかうかと乗ると危険です。

新しい出店には、エリアが異なることによるリスク(立地格差)と、ブランドを変えることによりリスク(業態格差)の2つがあります。
この2つのリスクを一度に両方背負ってしまうと、リスクは掛け算になって危険なレベルにまで上がります。
少なくともどちらか一方のリスクだけにするように心がけるべきです。
まとめ
以上のように、多店舗化には誰もが落ち入る失敗パターンがあります。
ただ、その失敗パターンの多くは、多店舗化を正しい手順で進めることにより、解消、または極小化していくことが可能です。
事前に失敗パターンがわかっていれ転ばぬ先の杖になると思います。
ぜひ、皆様の多店舗化ライフを充実させていただく、今回の記事をご参考にされてみてください。
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【多店舗出店】における5つの基本ステップ
多店舗出店
多店舗展開とは、ただ店舗を増やしていくことを言うのではありません。店舗を増やすことで業績(利益)を上げ、会社オーナーである社長も、店舗の責任者である店長も、中間管理職も、現場スタッフも、さらにはお客様や地域の人々も巻き込んで、みんなが幸せを感じられるようにすることが最終目標だと私は思います。
ただ多くの店舗を出店して「すごいね」と褒められたところで、会社が長期にわたって存続して、社長も従業員も満足し、お客様に愛されるようになれなければ、私は失敗なのではないかと思います。個々の店舗や業態は、時代に合わせて変化させていかなければなりません。それでも会社の理念を堅持し、できる限り永続させていくことこそ、肝心だと考えています。
だからこそ、多店舗展開により、倒産という最大のリスクを避けながらビジネスを成長させる道を選んでいただきたいのです。多店舗展開には成功のための正しい手順があります。正しい手順を知り、目標に向かって最短コースをとっていただきたいという想いで、弊社のコンサルティングや各種養成講座、セミナーなどを提供させていただいています。
ここでは、正しい多店舗展開の法則を、「出店方法」の面からお伝えしたいと思います。

多店舗出店における5つの基本ステップ
多店舗展開には、出店戦略が欠かせません。
これはいつ、どこに、どのような店舗を開店するのかという戦略のことです。
当然、多くの集客が見込める立地の物件を探し、その建物の外見、外装、フロアの内装、アプローチの状態、駐車場の有無、近隣の交通機関、交通量、商業施設・店舗などの条件を詳しく調べて、自社の事業にふさわしいかどうかを判断しなければなりません。立地条件は非常に重要な出店判断基準になります。
このためには、出店ターゲット地域の綿密な市場調査、商圏調査、競合分析、通行量調査など、種々の調査が必要になりますが、ここでは立地や物件選びについての詳細は省きます。それ以外の出店の条件について、以下に5つのステップで説明します。
- 既存店舗がおおいに繁盛していること
- 売れ筋商品が、儲け筋商品であること
- シナジー効果を最大に引き出す戦略があること
- 5店舗めまでは既存店舗と同業態、同一ブランドで出店すること
- 5店舗めまでは経営者が歩いていける距離感で出店すること

(1)既存店舗がおおいに繁盛していること
既存店舗の営業利益率が15%以上であることが、多店舗展開の最低条件です。あくまで正確に売上総利益から販売費および一般管理費(販管費)を引いた後の利益が15%以上でなければなりません。
この利益率はたとえば飲食店でいえば、べらぼうに繁盛していながら、経費をぎりぎりまで押さえ込んだ店の利益率と思ってもらってけっこうです。それほど繁盛しなければ、多店舗展開は難しいでしょう。これについては「多店舗経営」の項で詳しく触れています。
これを前提にして、なぜそれだけの利益率が可能になっているのかを分析してください。繁盛の理由、仕入れや物品調達コストが低くできている理由、競合他社と比較しての優位性、立地条件・物件条件の違い、集客施策・業態の優位性、資金調達の方法、その他、さまざまな成功の理由があるはずです。その複合した理由を冷静に分析し、明らかにすることが大切です。
分析を通して既存店舗の成功要因が明確になったとき、その要因を次の新規出店に継承することができます。
(2)売れ筋商品が、儲け筋商品であること
たとえば飲食店なら、看板メニュー(一番商品)がめちゃくちゃ売れているといいですね。
業態や席の数にもよりますが、たとえば50席の店ならば1日50品は注文されるほどの看板メニューがあると、利益率が上がる可能性が高くなります。同一の原材料、同一の調理やオペレーションになるので、仕入れ・調達のコスト低減やオペレーション時間の短縮、人件コスト削減につながります。その看板メニューの原価が安ければ安いほど、高利益商品になります。これがたくさん売れてくれると、利益率が増えることになります。
また一番商品はブランドの特徴にもなり、認知度を上げる効果も期待できます。

売れ筋商品があることと、それが高利益商品=儲け筋商品であることが、多店舗展開をしやすくする秘訣の1つです。そんな強い一番商品と営業利益率15%があれば、一気に10店舗くらいまで直営店で出店できるポテンシャルは間違いなくあると思ってもいいでしょう。
(3)シナジー効果を最大に引き出す戦略があること
やみくもに店舗を増やして失敗するのは、経費の増大を計算に入れずに出店を急ぐからです。正しい多店舗展開では、シナジー効果を知り、シナジー効果を最大化する出店戦略が不可欠です。それを知らない、またしようとしない会社が、多店舗展開に失敗して業界から撤退していくのです。
シナジー効果とは「相乗効果」とも言います。
ある要素とある要素を組み合わせたとき、単なる足し算以上のよい結果が生まれることがシナジー効果です。店舗ビジネスでは、複数店舗を出店したとき、それぞれの店舗間でシナジー効果が生まれます。
それぞれの店舗ではそれぞれの営業努力で売上と利益拡大をめざすのですが、複数店舗を管理する社長は、店舗をどのように出店すればシナジー効果が生まれるのか、原材料や物品の調達ルート、物流ルート、人材配置、求人の難易度など、さまざまな面から検討して、事業戦略を練るのです。全体を俯瞰して、大局的な立場からの判断がそこでは求められます。

同じ条件の店舗なら売上は店舗数の掛け算で増えていきます。シナジー効果を生まない多店舗化では、経費も同じように増えていきます。経費の増加が同程度ならまだよいのですが、間接費、管理費の比率は店舗数が増えるごとに上昇していくのが常です。1店舗の場合よりも、経費の割合が増えていくようでは、先々の店舗存続が危うくなります。これではダメです。
シナジー効果を意識して、出店戦略や店舗運営戦略に取り組むと、原材料の仕入れや物品調達コスト、求人コスト、広告・宣伝コスト、各種の間接費・管理費の割合も削減可能になり、全体の売上は店舗数に応じて増えていく一方で、各種経費の割合は低減していく状態が生まれます。
その結果として、出店数が増えれば増えるほど、利益率が向上し、資金の内部留保が増え、会社の信用も上がり、次の出店のための融資判断も有利になるという、好循環が生まれるのです。
ではシナジー効果とは具体的に何でしょうか。たとえば次のような効果が生じます。
【多店舗展開で生まれるシナジー効果の例】
- 原材料をまとめて発注することのスケールメリット
- ドミナント出店(面での出店)による社員数の削減
- ドミナント出店による店長数の削減
- ドミナント出店による物流コストの削減
- 消耗品をまとめて発注するスケールメリット
- 社員教育を同時に行うことによる人材育成の効率化
- 同時に求人広告を出すことによる募集コストの削減
- 同一業態をやることによる成功ノウハウの共有
- 同一業態をやることによる出店コストの削減
- 1店舗あたりの商品開発コストの削減
ドミナント出店という言葉は初めて聞かれるかもしれませんね。これについては後述します。
ただし、シナジー効果を十分に体感できるのは、6店舗以上の出店に成功した後であることも押さえておかなければなりません。店舗数が少ない状態では、相乗効果も限定的になるのは当然です。
多店舗展開のスタート当初は、本部(既存店舗)維持費、人材採用費、教育費、新店出店コスト、社会保険の完備などの出費がかさみ、利益が出にくくなるというデメリットがあるのが普通です。そんな出費も6店舗めを出店する頃には問題にならなくなるのですが、最初の5店舗めの出店までは、なかなか利益が出ない産みの苦しみが続くことが多いのです。
では、シナジー効果はどうすれば引き出せるのでしょうか。それが、以下のポイントになります。
(4)5店舗めまでは既存店舗と同業態、同一ブランドで出店すること
大きなシナジー効果の1つは、人材コストが削減できることです。
多店舗展開を離陸させるまでに最もネックになるのが、人件費と教育・育成コスト、求人コストです。シナジー効果を考慮した多店舗展開では、店舗ごとの従業員の数を抑えることが可能になります。1店舗で3人の社員が必要だった会社が3店舗を展開したときに、単純に3×3で9人必要になるわけではありません。
経験則として、その場合に必要な従業員数は7人です。商品設計や間接部門の担当者などは、複数店舗の業務をまとめて担当したほうが、合理的・効率的に仕事をさばける可能性が高いのです。同様に、店舗が増えれば増えるほど、人材コストは低減していけます。
ただし、実際にお客様と対面し、サービスなどを提供する現場スタッフはなかなか削減ができません。
しかも、店舗ビジネスでは大型総合チェーンよりも、専門分野に特化した専門店チェーンのほうが繁盛するのがトレンドですから、専門的な知識やノウハウをもったスタッフを育成することが必要になっています。
そうした専門性をもったスタッフは、簡単に別の業態やブランドの店舗には移動できないことに注意が必要です。たとえば、飲食店のスタッフが、新規開店したブティックに応援しに行っても、何もできないでしょう。また人材教育・育成の仕方もまったく違う内容と方法をとらなくてはなりません。
さらに、店舗の外装・内装や調度類の選び方についても、業態やブランドが違えばまったく変えなければなりませんし、原材料の仕入れ先も別途開拓する必要があります。
多店舗経営の実力がまだ十分でないうちに、異業態、新ブランドの店舗開発に取り組むのは危険です。それは少なくとも5店舗の経営に成功し、資金が十分に蓄えられてから後に検討すればよいことです。
少なくとも5店舗めまでは、成功ノウハウがそのまま生かせる同業態、同一ブランドの店舗を、水平展開していくことをお薦めします。
(5)5店舗めまでは経営者が歩いていける距離感で出店すること
最後の基本ステップは「ドミナント出店」です。
ドミナント出店というのは同業態、同一ブランドの店舗を、同一の地域に複数出店することを言います。セブンイレブンやスターバックスなどが得意にしているビジネスモデルで、特定地域内に複数店舗が展開できると、その地域全体を自社の商圏におさめることが可能になります。いわば自社の「縄張り」ができ、競合他社がそこに参入しにくくできるわけです。
しかも、地域内で同業態ではナンバーワンの会社として認知され、評判がよければブランド力が高まります。これは集客にも効果がありますし、求人においても有利です。
ドミナント出店を行なうと、1店舗がカバーできる商圏が狭まり、売上効率が落ちる現象も起きますが、仕入れ先や物品調達先を変えずに大量発注によるコスト削減効果が生まれます。
また広告・宣伝も特定地域内の複数店舗で共通して実施できるので、やはりコストは削減できます。
また、求人広告の場合も、地域内なら複数店舗の求人をまとめて掲載することで、遠隔地での求人よりもはるかに低コストになります。物流コストも同様に削減可能です。社内での配送や広告・販促などのための業務量も低減できるので、経費削減に大きな効果が出てきます。
これこそがシナジー効果です。

では、ドミナント出店はどのような単位で行なえばよいのでしょうか。
私は、経営者が歩いていける範囲に、次の店舗を出店するのがいいと考えています。しかし地域によってはなかなかそうはできない場合も多いでしょう。
ですから、既存店舗から自転車や自動車など交通機関を使って10分程度の位置に、次の店舗を構えることをお薦めしています。東京で言えば、新宿地区なら西新宿、歌舞伎町、新宿三丁目、新宿御苑、新宿東南口、新宿西口のあたりで出店するようなイメージですね。
西新宿で成功したから次は赤坂や渋谷への出店を考えるのは失敗のもとです。ましてや、東京の会社なのに大阪や名古屋など見ず知らずの大都市への出店をいきなりめざすのはもってのほかです。
まずは1店舗めから3店舗めまでを繁盛させることを考えよう
出店戦略を主軸に多店舗展開のための5つのステップを解説しましたが、これに加えて、「多店舗経営」の項で説明している「仕組み化」や「マニュアル化」を常に意識していただきたいと思います。
1店舗めの繁盛店は、たいてい経営者の不眠不休のがんばりによって生まれています。それはオーナーである社長のマンパワーによるものです。多店舗展開をしていくと、社長個人のがんばりでは体力的にも無理がありますから、他の人に任せられる部分は任せて、意思決定の権限を委譲していく必要が出てきます。
とはいうものの、3店舗めまでの経営で失敗すると、その後の展開が非常に困難になります。10店舗程度に拡大するまでは、1敗もできない戦いだと心得なければなりません。
ですから、3店舗めまでは社長が毎日店舗に顔を出し、運営状況を確認して、失敗のリスクを可能な限りゼロにするように監督、指導するほうがよいと思っています。
いずれは信頼できる店長にすべてを任せられるようにもっていくべきですが、その前の段階では3店舗程度の規模で、盤石の利益が出せるように、キャッシュフローが潤沢になるように、注力していく必要があると考えます。
以上のように、多店舗出店には正しいやり方が存在します。
あくまでも基本中の基本のみを抜粋した形で紹介させていただきましたが、詳しい具体的なやり方については、弊社の多店舗化養成塾や各種セミナー、フランチャイズ3.0構築セミナーでお伝えしていますので、ぜひご参加をお薦めします。
【多店舗経営】の正しい知識とやり方
目次
店舗経営が軌道に乗り、1号店が繁盛し経営が安定してくると次に考えるのが2店舗目、3店舗目の開店を視野に入れた多店舗展開です。
- ではどのタイミングで2店舗目の開店に踏み切るのがいいのでしょうか?
- 2号店目の商圏や仕入れルート、集客面や融資面はどうしたらいいのでしょうか?
- 多店舗展開における正しい知識ややり方などはあるのか?
物事にはメリットとデメリットがあります。
メリットだけのものがなければ、デメリットだけのものもありません。
では多店舗展開のおけるデメリットを一瞬で帳消しにできるくらいのメリットは存在するのでしょうか?
こちらのサイトでは、多店舗経営のメリットとデメリット、多店舗展開に踏み切る正しいタイミングについて解説していきたいと思います。
どのタイミングで2店舗目に踏み切るのがいいのか?
店舗経営とは箱ビジネスなので、金融機関から融資を得て店舗を構えなければなりません。
つまり99%の経営者は借金をしてビジネスをはじめます。
そのため失敗イコール自己破産というリスクが常にあります。
そのため知っておきたいのは、

- 飲食店であれば出店計画や立地戦略、また仕入れコストをいかに抑えていくか?
- さらに1号店と2号店との商圏の範囲やブランドの認知をどう広めていくか?
- 将来的に直営店で圧倒的な繁盛店にしてから、フランチャイズ展開していったほうがいいのか?
- 物件探しのコツや、店舗マネジメントはどうするか?
- 店舗オペレーションの標準化、スタッフのモチベーション管理をどうしたらいいのか?
- 店長の育成をどうしたらいいのか?
- 成功ノウハウを体系化したマニュアルはどうするか?
- 多店舗展開におけるデメリットはあるのか?
これらを慎重に検討しなければなりません。
で、多店舗化の専門家として私の考える多店舗展開のメリットは、複数店舗を利用しての仕入れコストの削減、複数店舗を利用しての集客面の効率化、競合店対策、従業員のモチベーションの向上、シナジー効果をかけることによるあらゆる経費の削減、成功ノウハウの共有が挙げられます。
今回はこれら多店舗展開におけるメリットとデメリットを解説しながら、成功する秘訣をご紹介します。
多店舗展開のメリットとは?
1号店を開店して数年が経ち、経験と実績を積み重ねると、オーナーは2号店、3号店と多店舗展開を考えるようになります。
多店舗化の原則として、まずは1号店目が繁盛していて、エリアから顧客からの認知が上がってきた時に検討しましょう。
そこでまずは飲食店を例にして多店舗経営のメリットについてご紹介していきます。

- 大量仕入れによるスケールメリットを活用して原価や経費、コストを下げられる
- 地域において自社商圏を確立しながら競合店の出店を防止でき、リスクを分散できる
- 接客面、集客ノウハウ、繁盛店の秘訣など、成功ノウハウや失敗ノウハウを蓄積できる
- 多店舗化による認知度アップによる優秀な店長に頼らないチェーン経営が実現できる
- 店舗数が増えることによる撤退基準や失敗パータンが明確になる
- 物件選びのノウハウが溜まり、物件選びの精度が上がる
- 店舗数が増えることによるブランディンング効果で人材調達が容易になる
- ブランディング効果により、金融機関から資金調達が容易になる
- 年々高騰しているコンプライアンス対応コストのための原資確保
- 業態寿命による急激な集客減、売上減などによるリスク分散
- 1店舗の業績に左右されない多店舗展開によるチェーン経営が実現できる
- 社内のれん分けを含めたオーナー輩出により、従業員のキャリアパスが豊富になる
- 繁盛店の秘訣を体系化し、コンセプト設計、営業支援などのコンサルビジネスの実現
- 社内接客コンテスト、社内イベントをからめ、店長や従業員の成長の場やモチベーションUPの場をつくれる
- 店舗オペレーションの標準化、体系化により、仕組み経営ができ、オーナーは現場から離れられる
- 店舗マネジメントをすすめていく過程で、家業から企業に生まれ変わる
- 多店舗展開メリットを最大に生かし、あらゆるコストや経費を下げ、利益率の改善
多店舗展開のデメリットとは?
多店舗展開のメリットを複数述べましたが、次にデメリットを挙げてきましょう。
これはそのままあなたが不安に感じているポイントではないでしょうか。
多店舗展開のデメリット
- 店舗が増えるのに応じて固定費や変動費が増大する
- すべての店舗が成功するとは限らないので、不採算店ができた時に、ドル箱店の足を引っ張るリスクがある
- 他の店舗と商圏を食い合う可能性がある
- 1店舗で不祥事が発生すると、全店に風評被害の影響を受ける
- 繁盛店を作り続ける難しさ
- 従業員のマネジメントが複雑になる
- 物件を見つかる前に人員を用意しなければならないので人件費が高騰する
- その他の管理全般が複雑化し、オペレーション負担が増える
- オーナーと従業員の間に距離ができ、営業利益が落ちる可能性がある
- オーナーと末端の従業員の間にマネージャーなどの中間管理職が入るため、売上に関わらない管理コストが上がる

これらのデメリットの中には避けられないものもありますが、仕組みづくりを適切に行うことにより解消可能なものもあります。
例えばオーナーと従業員との距離が遠くなることによる悪影響などはいわゆる「大企業病」ですが、上手な仕組みづくりと人材育成により予防が可能です。
またデメリットが避けられなくても、諦めずに改善努力を続ければ極小化できます。
多店舗化の成功法則に沿って、ビジネスモデルと経営戦略を絶えず修正・改善していけば、メリットはデメリットを必ず上回ります。
まずは、多店舗展開にはメリットと同時にデメリットもあることを、事実として受け入れてください。
ただ、デメリットは適正な多店舗展開を行うことで、一挙に帳消しにすることができます。
多店舗展開のシナジー効果には、それだけの威力があるのです。
店舗ビジネスを将来にわたって維持・発展させるには、多店舗展開が最善の道だと私は考えています。
失敗しないための出店戦略と立地戦略
多くの経営者が勘違いしていることがあります。
それは店舗数が増えると自然発生的にチェーン化できると思っているようですが、これは間違いです。
多店舗展開は気合と根性でするのではなく、多店舗化できる事業を作ってこれを正しい手順で広げていくことがポイントになります。
たとえば1号店が儲かったから勢いに乗って2号店・3号店を出したいと考えるのは人情ですが、たいていの経営者がここでつまずきます。
まず大切なことは、多店舗化の第一の条件は、1号店がメチャクチャ儲かっていなくてはなりません。
具体的な数字でいうと営業利益が15%以上です。
既存店のキャッシュフローが原理原則
なぜ15%以上かと言いますと、多店舗化の出店費用の原資は、既存店のキャッシュフローが原理原則です。もちろん金融機関から融資を受けますが、あくまでも多店舗化の原資は1号店のキャッシュフローです。
店舗ビジネスは投資 → 回収 → 投資 → 回収のサイクルの中で、しっかり資金を確保して「カネ」という土台をしっかり固めなければなりません。

メチャクチャ売れているけど利益は雀の涙。
これでは投資したものが回収できなければ、余裕資金を貯めるどころか、資金不足で経営は成り立たなくなってしまいます。
だからこそ15%以上の利益から、内部留保と、金融機関の借り入れ、そして出店コストを貯めていかなければなりません。
15%とそういう意味で一つの目安です。
多店舗化できるポテンシャルを持った事業ならば2〜3年で初期投資を回収していかなければならないので、15%以下ならば、その事業での多店舗化は諦めた方がいいと私は判断しています。
営業利益15%以上が必要なわけ
あと、この営業利益15%以上という数字はもう一つの意図があります。
それは将来直営店展開だけに留まらず、フランチャイズ展開していくという選択肢を増やすことに繋がります。
その点で考えますと15%は必要最低限の数字になります。
なぜならフランチャイズビジネスは本部のノウハウを提供する対価として加盟店は本部にロイヤリティーを支払います。
このロイヤリティーは金額で固定されているところもあれば、売上の何パーセントというように比率が固定されているところもあります。

つまり、当たり前ですが加盟店は本部よりも利益率が悪くなるからです。
この点から考えても、15%以上の利益が出ていないと、FC本部にロイヤリティーを支払った後に加盟店に利益が残りません。フランチャイズビジネスは長期的な視点で見ると、加盟店が儲からないと本部が儲からない仕組みです。
つまりwin-winの関係を築かないとならないので、この点からも営業利益率15%以上は必達なのです。
多店舗経営における成功要因の明確化
営業利益率が安定して15%以上出るようになりました。
じゃあ、安心して多店舗展開していこうと思って広げていっても大抵の大抵の経営者がそこでつまずきます。
つまり15%以上の利益が出ていると言っても安心できないのです。
たとえば、立地がいいだけで売れている店もありますし、原価率60%かけているから売れている店もあります。
その他に、すごい腕を持った料理人を高給で雇っていることが人気の秘密で売れているケースだってあります。
つまり1号店の成功要因が明確になっていなければなりません。
この時に分析する要素は売上を7つの要素に分解して考えます。
1号店目の成功要因を正しく分析するやり方
私はお店の売上を分析する時に、常に以下の7つに分けて考えるようにしています。
- 顧客を集めるための仕組みや仕掛けはあるのか?
- 2回目来店につなげるための仕組みや仕掛けはあるのか?
- 3回目来店につなげるための仕組みや仕掛けはあるのか?
- リピート客が離客させないための仕組みや仕掛けがあるのか?
- 意図的に口コミを発生させるための仕組みや仕掛けがあるのか?
- 買い上げ点数を意図的に増やすための仕組みや仕掛けがあるのか?
- 価値をあげながら一品の単価を上げていくための仕組みや仕掛けがあるのか?
こちらの7つを意識しないで、今の売上を維持できているとしたら、それは偶然の産物にすぎません。
つまり、再現性がないということです。

よく会社の会議で売上が悪い時に売上をどう上げていこうかの議論をすると思います。
その時、社長や一部の優秀な社員だけが話をして、後のメンバーは何をやっていっていいかわからないという風な顔をしています。
では、どうしたらいいのか?
まず売上を上げていこうと議論する時に、「どうやって売上を上げていこうか?」というよりも、「30代前後の新規の女性客を増やすためにどうしていこうか?」と聞いた方が、現場の人間は具体的な意見を述べるようになります。
さらに掘り下げて、「30代前後の新規の女性客を増やすために、店前の置き看板やノボリを変えるとしたらどうしたらいい?」と質問すれば、議論は活性化します。
現場の生きた意見を引き出すことも可能です。
このようなやり方で、なぜ自店が15%以上の利益が出ているのかを仮説でもいいので言語化していくのです。
仮説が出れば、あとは検証していくだけです。
2号店、3号店への出店は再現性がポイントになる
最後に成功要因は過去、そして現在の業界・市場の状態、時代背景などにより、常に変化します。業界と市場は生き物です。
その意味でも業界・市場の推移と競合他社の調査を踏まえ、その事業が持つ成功要因が将来に渡って有効かどうかを判断することが極めて重要です。
プロダクト ライフ サイクルという理論があります。
これは商品が、導入期 → 成長期 → 安定期 → 衰退期の4つの段階を経るという理論です。

業態にも寿命があります。
これは国や生物などありとあらゆることに当てはまると言います。
では、今の自社のブランドはどうなのか。
成長期にあるのか、それとも成熟期なのか、はたまた衰退期なのか。
そう言った意味で、あらゆる角度から1号店目の成功要因を正しく分析することによって、その成功要因を2号店、3号店とコンスタントに再現できるようになります。