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【多店舗出店】における5つの基本ステップ

多店舗出店

多店舗展開とは、ただ店舗を増やしていくことを言うのではありません。店舗を増やすことで業績(利益)を上げ、会社オーナーである社長も、店舗の責任者である店長も、中間管理職も、現場スタッフも、さらにはお客様や地域の人々も巻き込んで、みんなが幸せを感じられるようにすることが最終目標だと私は思います。

多店舗出店における5つの基本ステップについて動画で解説していますので、ご覧ください。

ただ多くの店舗を出店して「すごいね」と褒められたところで、会社が長期にわたって存続して、社長も従業員も満足し、お客様に愛されるようになれなければ、私は失敗なのではないかと思います。個々の店舗や業態は、時代に合わせて変化させていかなければなりません。それでも会社の理念を堅持し、できる限り永続させていくことこそ、肝心だと考えています。

だからこそ、多店舗展開により、倒産という最大のリスクを避けながらビジネスを成長させる道を選んでいただきたいのです。多店舗展開には成功のための正しい手順があります。正しい手順を知り、目標に向かって最短コースをとっていただきたいという想いで、弊社のコンサルティングや各種養成講座、セミナーなどを提供させていただいています。

ここでは、正しい多店舗展開の法則を、「出店方法」の面からお伝えしたいと思います。

多店舗出店について

多店舗出店における5つの基本ステップ

多店舗展開には、出店戦略が欠かせません。

これはいつ、どこに、どのような店舗を開店するのかという戦略のことです。

当然、多くの集客が見込める立地の物件を探し、その建物の外見、外装、フロアの内装、アプローチの状態、駐車場の有無、近隣の交通機関、交通量、商業施設・店舗などの条件を詳しく調べて、自社の事業にふさわしいかどうかを判断しなければなりません。立地条件は非常に重要な出店判断基準になります。

このためには、出店ターゲット地域の綿密な市場調査、商圏調査、競合分析、通行量調査など、種々の調査が必要になりますが、ここでは立地や物件選びについての詳細は省きます。それ以外の出店の条件について、以下に5つのステップで説明します。

  1. 既存店舗がおおいに繁盛していること
  2. 売れ筋商品が、儲け筋商品であること
  3. シナジー効果を最大に引き出す戦略があること
  4. 5店舗めまでは既存店舗と同業態、同一ブランドで出店すること
  5. 5店舗めまでは経営者が歩いていける距離感で出店すること

(1)既存店舗がおおいに繁盛していること

既存店舗の営業利益率が15%以上であることが、多店舗展開の最低条件です。あくまで正確に売上総利益から販売費および一般管理費(販管費)を引いた後の利益が15%以上でなければなりません。

この利益率はたとえば飲食店でいえば、べらぼうに繁盛していながら、経費をぎりぎりまで押さえ込んだ店の利益率と思ってもらってけっこうです。それほど繁盛しなければ、多店舗展開は難しいでしょう。これについては「多店舗経営」の項で詳しく触れています。

これを前提にして、なぜそれだけの利益率が可能になっているのかを分析してください。繁盛の理由、仕入れや物品調達コストが低くできている理由、競合他社と比較しての優位性、立地条件・物件条件の違い、集客施策・業態の優位性、資金調達の方法、その他、さまざまな成功の理由があるはずです。その複合した理由を冷静に分析し、明らかにすることが大切です。

分析を通して既存店舗の成功要因が明確になったとき、その要因を次の新規出店に継承することができます。

(2)売れ筋商品が、儲け筋商品であること

たとえば飲食店なら、看板メニュー(一番商品)がめちゃくちゃ売れているといいですね。

業態や席の数にもよりますが、たとえば50席の店ならば1日50品は注文されるほどの看板メニューがあると、利益率が上がる可能性が高くなります。同一の原材料、同一の調理やオペレーションになるので、仕入れ・調達のコスト低減やオペレーション時間の短縮、人件コスト削減につながります。その看板メニューの原価が安ければ安いほど、高利益商品になります。これがたくさん売れてくれると、利益率が増えることになります。

また一番商品はブランドの特徴にもなり、認知度を上げる効果も期待できます。

会社のお金は図で掴む
会社のお金は図で掴む

売れ筋商品があることと、それが高利益商品=儲け筋商品であることが、多店舗展開をしやすくする秘訣の1つです。そんな強い一番商品と営業利益率15%があれば、一気に10店舗くらいまで直営店で出店できるポテンシャルは間違いなくあると思ってもいいでしょう。

(3)シナジー効果を最大に引き出す戦略があること

やみくもに店舗を増やして失敗するのは、経費の増大を計算に入れずに出店を急ぐからです。正しい多店舗展開では、シナジー効果を知り、シナジー効果を最大化する出店戦略が不可欠です。それを知らない、またしようとしない会社が、多店舗展開に失敗して業界から撤退していくのです。

シナジー効果とは「相乗効果」とも言います。

ある要素とある要素を組み合わせたとき、単なる足し算以上のよい結果が生まれることがシナジー効果です。店舗ビジネスでは、複数店舗を出店したとき、それぞれの店舗間でシナジー効果が生まれます。

それぞれの店舗ではそれぞれの営業努力で売上と利益拡大をめざすのですが、複数店舗を管理する社長は、店舗をどのように出店すればシナジー効果が生まれるのか、原材料や物品の調達ルート、物流ルート、人材配置、求人の難易度など、さまざまな面から検討して、事業戦略を練るのです。全体を俯瞰して、大局的な立場からの判断がそこでは求められます。

シナジー効果イメージ図
シナジー効果イメージ図

同じ条件の店舗なら売上は店舗数の掛け算で増えていきます。シナジー効果を生まない多店舗化では、経費も同じように増えていきます。経費の増加が同程度ならまだよいのですが、間接費、管理費の比率は店舗数が増えるごとに上昇していくのが常です。1店舗の場合よりも、経費の割合が増えていくようでは、先々の店舗存続が危うくなります。これではダメです。

シナジー効果を意識して、出店戦略や店舗運営戦略に取り組むと、原材料の仕入れや物品調達コスト、求人コスト、広告・宣伝コスト、各種の間接費・管理費の割合も削減可能になり、全体の売上は店舗数に応じて増えていく一方で、各種経費の割合は低減していく状態が生まれます。

その結果として、出店数が増えれば増えるほど、利益率が向上し、資金の内部留保が増え、会社の信用も上がり、次の出店のための融資判断も有利になるという、好循環が生まれるのです。

ではシナジー効果とは具体的に何でしょうか。たとえば次のような効果が生じます。

【多店舗展開で生まれるシナジー効果の例】

  • 原材料をまとめて発注することのスケールメリット
  • ドミナント出店(面での出店)による社員数の削減
  • ドミナント出店による店長数の削減
  • ドミナント出店による物流コストの削減
  • 消耗品をまとめて発注するスケールメリット
  • 社員教育を同時に行うことによる人材育成の効率化
  • 同時に求人広告を出すことによる募集コストの削減
  • 同一業態をやることによる成功ノウハウの共有
  • 同一業態をやることによる出店コストの削減
  • 1店舗あたりの商品開発コストの削減

ドミナント出店という言葉は初めて聞かれるかもしれませんね。これについては後述します。

ただし、シナジー効果を十分に体感できるのは、6店舗以上の出店に成功した後であることも押さえておかなければなりません。店舗数が少ない状態では、相乗効果も限定的になるのは当然です。

多店舗展開のスタート当初は、本部(既存店舗)維持費、人材採用費、教育費、新店出店コスト、社会保険の完備などの出費がかさみ、利益が出にくくなるというデメリットがあるのが普通です。そんな出費も6店舗めを出店する頃には問題にならなくなるのですが、最初の5店舗めの出店までは、なかなか利益が出ない産みの苦しみが続くことが多いのです。

では、シナジー効果はどうすれば引き出せるのでしょうか。それが、以下のポイントになります。

(4)5店舗めまでは既存店舗と同業態、同一ブランドで出店すること

大きなシナジー効果の1つは、人材コストが削減できることです。

多店舗展開を離陸させるまでに最もネックになるのが、人件費と教育・育成コスト、求人コストです。シナジー効果を考慮した多店舗展開では、店舗ごとの従業員の数を抑えることが可能になります。1店舗で3人の社員が必要だった会社が3店舗を展開したときに、単純に3×3で9人必要になるわけではありません。

経験則として、その場合に必要な従業員数は7人です。商品設計や間接部門の担当者などは、複数店舗の業務をまとめて担当したほうが、合理的・効率的に仕事をさばける可能性が高いのです。同様に、店舗が増えれば増えるほど、人材コストは低減していけます。

ただし、実際にお客様と対面し、サービスなどを提供する現場スタッフはなかなか削減ができません。

しかも、店舗ビジネスでは大型総合チェーンよりも、専門分野に特化した専門店チェーンのほうが繁盛するのがトレンドですから、専門的な知識やノウハウをもったスタッフを育成することが必要になっています。

そうした専門性をもったスタッフは、簡単に別の業態やブランドの店舗には移動できないことに注意が必要です。たとえば、飲食店のスタッフが、新規開店したブティックに応援しに行っても、何もできないでしょう。また人材教育・育成の仕方もまったく違う内容と方法をとらなくてはなりません。

さらに、店舗の外装・内装や調度類の選び方についても、業態やブランドが違えばまったく変えなければなりませんし、原材料の仕入れ先も別途開拓する必要があります。

多店舗経営の実力がまだ十分でないうちに、異業態、新ブランドの店舗開発に取り組むのは危険です。それは少なくとも5店舗の経営に成功し、資金が十分に蓄えられてから後に検討すればよいことです。

少なくとも5店舗めまでは、成功ノウハウがそのまま生かせる同業態、同一ブランドの店舗を、水平展開していくことをお薦めします。

(5)5店舗めまでは経営者が歩いていける距離感で出店すること

最後の基本ステップは「ドミナント出店」です。

ドミナント出店というのは同業態、同一ブランドの店舗を、同一の地域に複数出店することを言います。セブンイレブンやスターバックスなどが得意にしているビジネスモデルで、特定地域内に複数店舗が展開できると、その地域全体を自社の商圏におさめることが可能になります。いわば自社の「縄張り」ができ、競合他社がそこに参入しにくくできるわけです。

しかも、地域内で同業態ではナンバーワンの会社として認知され、評判がよければブランド力が高まります。これは集客にも効果がありますし、求人においても有利です。

ドミナント出店を行なうと、1店舗がカバーできる商圏が狭まり、売上効率が落ちる現象も起きますが、仕入れ先や物品調達先を変えずに大量発注によるコスト削減効果が生まれます。

また広告・宣伝も特定地域内の複数店舗で共通して実施できるので、やはりコストは削減できます。

また、求人広告の場合も、地域内なら複数店舗の求人をまとめて掲載することで、遠隔地での求人よりもはるかに低コストになります。物流コストも同様に削減可能です。社内での配送や広告・販促などのための業務量も低減できるので、経費削減に大きな効果が出てきます。

これこそがシナジー効果です。

ドミナントエリアについて
ドミナントエリアについて

では、ドミナント出店はどのような単位で行なえばよいのでしょうか。

私は、経営者が歩いていける範囲に、次の店舗を出店するのがいいと考えています。しかし地域によってはなかなかそうはできない場合も多いでしょう。

ですから、既存店舗から自転車や自動車など交通機関を使って10分程度の位置に、次の店舗を構えることをお薦めしています。東京で言えば、新宿地区なら西新宿、歌舞伎町、新宿三丁目、新宿御苑、新宿東南口、新宿西口のあたりで出店するようなイメージですね。

西新宿で成功したから次は赤坂や渋谷への出店を考えるのは失敗のもとです。ましてや、東京の会社なのに大阪や名古屋など見ず知らずの大都市への出店をいきなりめざすのはもってのほかです。

まずは1店舗めから3店舗めまでを繁盛させることを考えよう

出店戦略を主軸に多店舗展開のための5つのステップを解説しましたが、これに加えて、「多店舗経営」の項で説明している「仕組み化」や「マニュアル化」を常に意識していただきたいと思います。

1店舗めの繁盛店は、たいてい経営者の不眠不休のがんばりによって生まれています。それはオーナーである社長のマンパワーによるものです。多店舗展開をしていくと、社長個人のがんばりでは体力的にも無理がありますから、他の人に任せられる部分は任せて、意思決定の権限を委譲していく必要が出てきます。

とはいうものの、3店舗めまでの経営で失敗すると、その後の展開が非常に困難になります。10店舗程度に拡大するまでは、1敗もできない戦いだと心得なければなりません。

ですから、3店舗めまでは社長が毎日店舗に顔を出し、運営状況を確認して、失敗のリスクを可能な限りゼロにするように監督、指導するほうがよいと思っています。

いずれは信頼できる店長にすべてを任せられるようにもっていくべきですが、その前の段階では3店舗程度の規模で、盤石の利益が出せるように、キャッシュフローが潤沢になるように、注力していく必要があると考えます。

以上のように、多店舗出店には正しいやり方が存在します。

あくまでも基本中の基本のみを抜粋した形で紹介させていただきましたが、詳しい具体的なやり方については、弊社の多店舗化養成塾や各種セミナー、フランチャイズ3.0構築セミナーでお伝えしていますので、ぜひご参加をお薦めします。

多店舗出店
2店舗目の出店のタイミングは1店舗目が軌道にのり、安定した黒字の業績を出していることが重要です。新店舗の開業では金融機関からの融資が受けられるかも成功の秘訣です。展開の方法は、直営店展開とフランチャイズ展開(fc)の2つに主に分けられます。店舗数を増加させると、全体の売上の増加・認知度の向上・仕入れのコストダウン・出店費用のコストダウン・加盟金の獲得・ロイヤリティの獲得などがあります。一方で、新店舗が現在のお店と近すぎれば競合してしまい、遠すぎればオペレーションが非効率になってしまいます。現場マネージャーのオペレーションを向上させることは業績を軌道にのせ、スケール メリットを得る秘訣のひとつでもあります。コロナの影響で中食の頻度が増加するため、with コロナでは中食へのオペレーションも重要である。