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多店舗展開
事にはメリットがあればデメリットがあります。
メリットだけのものはありませんし、デメリットだけのものもありません。
もちろん多店舗展開におけるメリットもあれば、デメリットもあります。インターネット市場で「多店舗展開」「多店舗化」「多店舗」の後に一緒に検索される言葉に何が多いかご存知でしょうか?
これは仮想通貨やF Xをはじめとする投資商品も同じ傾向があります。
その言葉こそ「デメリット」検索者や「メリット」検索者です。
つまり「多店舗展開 デメリット」「多店舗展開 メリット」「多店舗展開 メリットデメリット」と検索しているわけです。
本気だからこそ、メリットもデメリットも把握したい。
これが多店舗展開を本気で考えている経営者の本音です。
私は多店舗展開の専門家として200社以上のフランチャイズ本部と、4,000社を超える多店舗化企業の多店舗展開を支援してきました。そこで今回は、多店舗展開についてその本質について説明していきます。
利益増加につながる正しい多店舗展開のやり方
飲食店、美容室における経営はいま、先行きの見えない困難な時代に突入したと言われています。
業界では「規模の拡大は時代遅れだ」という一部の声が聞こえていますがそれは本当でしょうか?
私の答えはノーです。
なぜなら正しく多店舗展開することによって利益増加につながりますし、人材確保のフックとなり、人員数の増加、人材育成にもつながるからです。ここ5年間で飲食店、美容室、治療院の利益率は平均5%を減りました。
人の依存し、定着率の悪い企業であれば10%の利益がわずか5年で減っている会社もあります。
これは売上減もありますが、主に人件費の高騰、社保の加入、募集費の高騰が挙げられます。
深刻な人材不足、人が集まらない、求人コストは上がり続けるなど明るい未来が見えない先行きが不安定な状態です。
原材料費とアルバイト代が高騰することによって、利益額が減り、銀行や公庫からの借入金を返済すると、手元にはキャッシュが残らない状態が年々拡大しているのです。
この問題にストップを掛けないと、やがて運転資金がショートし、経営者自身の内部留保で補填してもだめなら倒産、さらに自己破産に至る恐怖のシナリオも待っているのです。
この厳しい状況を変えていくためにはどうしたらいいと思いますか?このネガティブな要因を解消する案が、正しい「多店舗展開のやり方」なのです。
経営における最大のリスクは「倒産」
私が塾長として開催している多店舗化養成塾に参加している経営者に毎回伝えていることは多店舗展開の目的はリスクヘッジだということです。
ではここで質問しますが、店舗経営における最大のリスクは何だと思いますか?
それは言うまでもなく「倒産」です。
そして「倒産」より怖いのが「個人破産」です。
店舗ビジネスの98パーセントの経営者は金融機関からの借り入れによって事業展開をしています。
平均借入額は1,200万円です。
つまり借金を返せなくなって、自己破産するのが経営においての最悪なシナリオです。
これを防ぎ、事業を未来永劫に永続させるための唯一の戦略が、多店舗展開だと、私は確信しています。
ではなぜ多店舗展開が倒産へのリスクヘッジになるのでしょうか?それを考える前にまず、多店舗展開で実現する具体的なメリットとは何かを考えてみましょう。
多店舗展開の16のメリット
- 大量仕入れによるスケールメリットを活用して原価や経費を下げられる
- 地域において適切な立地で自社商圏を確立しながら、競合店の出店を防止できる
- 接客面、集客ノウハウ、繁盛店の秘訣など、成功ノウハウや失敗ノウハウが蓄積できる
- 多店舗化による認知度アップによるチェーン経営が実現できる
- 店舗数が増えることによる撤退基準や失敗パターンが明確になる
- 物件選びの精度が上がる
- 店舗数が増えることによるブランディング効果で認知が向上
- 現場のモチベーションが上がり人材調達が容易になる
- ブランド向上、認知向上により、金融機関からの資金調達が容易になる
- 年々高騰しているコンプライアンス対応コストのための原資確保ができる
- 業態寿命による急激な集客減、売上減などによるリスクを回避できる
- 1店舗の業績に左右されない多店舗展開によるチェーン経営が実現できる
- 社内のれん分け・独立を含めたオーナー輩出により、従業員のキャリアパスが豊富になる
- 繁盛店の秘訣を体系化し、コンセプト設計、営業支援などのコンサルビジネスが実現する
- 社内接客コンテスト、社内イベントをからめ、店長や従業員の成長の場が提供できる
- 多店舗展開メリットを最大に生かし、あらゆるコストや経費を下げ、利益率を改善できる
多店舗化をうまく展開すれば、これらのメリットが実現できます。
(1)の大量仕入れによる原価や経費の削減効果はわかりやすいですね。
(2)は地域ドミナント出店により、商圏を面で押さえて、競合他社が出店してくる余地を無くすことができるのも、大きなポイントです。
そのほかは、経営効率を改善し、コストを削減できますし、独自の仕入れルートの開発と強化、同時に人材登用・育成の仕組みを構築することもできます。
その結果、競合との差別化を図ることができることこそ、多店舗化の秘訣なのです。
(1)〜(15)のメリットを享受した結果として、(16)に上げた利益率改善ができます。
これを私は多店舗展開における「戦略的シナジー効果」と呼んでいます。
多店舗展開における最大のメリット
多店舗展開で得られる最大のメリットは「利益率改善」です。
事業は採算割れし続けると永続させることはできません。
そしてよく見ていただきたいことは、上記の(1)〜(15)のメリットを、1店舗しか経営していなければ享受することはできません。
なぜならシナジーをかけられないからです。
1+0はどんなに頑張っても1以上にはなりません。
これを正しい多店舗展開をすることにより、1+1が2ではなく、3や4や5にさせていくのが多店舗展開だからできる正しいメリットなのです。
2店舗目、3店舗目はプロトモデルを作っている意識で、トライ&エラーを繰り返す。
そして最大限のシナジーが発揮できるようになったら、その成功ノウハウを強化して水平展開していく。
その結果、利益率が増大していくわけです。ではシナジー効果は具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
多店舗展開の10のシナジー効果
- 原材料をまとめて発注することのスケールメリット
- 消耗品をまとめて発注するスケールメリット
- 同一業態をやることによる成功ノウハウの共有
- 同一業態をやることによる出店コストの削減
- 1店舗あたりの商品開発コストの削減
- ドミナント出店(面での出店)による社員数の削減
- ドミナント出店による店長数の削減
- ドミナント出店による物流コストの削減
- 社員教育を同時に行うことによる人材育成の効率化
- 同時に求人広告を出すことによる募集コストの削減
上記の10個をよく眺めて欲しいのですが、1店舗から10店舗、10店舗から100店舗と店舗が増えていけばいくほど、シナジーが働き利益が増大していくことがわかるかと思います。これを経済学では「規模の経済性」と呼びます。
つまり規模が大きくなればなるほど平均コストが下がるメリットのことで、これを「スケールメリット」と呼びます。
まとめると「多店舗展開」→「シナジー効果」→「スケールメリット」→「利益率U P」となるのです。
利益率を上げれば、役員報酬を1000万円以上にできる
利益率が向上すれば、役員報酬を増やすことができるので、経営者自身の手持ちのキャッシュを増やすことができます。
中小企業の場合、会社そのものの認知度や信用度の評価は難しいので、実際には経営者個人の人物と資産が大きく評価されます。
つまり多店舗展開のおける資金調達力には社長の個人資産状況が大きな審査項目になるのです。
前述したように銀行融資の場合、融資に対して社長の個人保証をつけることが求められることがほとんどです。公庫からの融資などでは社長の個人資産が少なくても融資実行されることはありますが、限度額フルに借りられません。
さらに個人資産が少ない状態で、1店舗での営業を続けていくとどうなるでしょうか。
先ほど触れたように、経費がどんどん増える一方では、売上が一定でも利益は確実に減っていきます。
その結果、手元のキャッシュが減る一方、自らの報酬を上げることができず、融資を受けられない。
そしてやがて会社の資金が尽きて、補填もままならなくなると資金ショートして倒産。
その後、自己破産するというのが最悪のシナリオになります。
自己破産すると、信用がなくなるので最低でも10年の間、融資を受けるどころかクレジットカードも作れない、さらに100万円以上の資産は没収される事態に陥ります。
会社は赤字でも倒産しませんが、社長の資産が尽きると黒字でも倒産します。
だからこそ、多店舗展開をして、社長自身の役員報酬を増やし、資産をできるだけ増やしておくことが重要なのです。
役員報酬1,000万円は最低でも取りたいわけ
では、オーナーの役員報酬はいくらあればよいのでしょうか?
その一つの基準は年間1000万円が最低基準だと思います。
なぜならリスクを背負いながら起業し、店舗を開業し、日々の経営と店舗オペレーションに頑張っておられる皆さんにとって、1000万円は高いでしょうか、安いでしょうか。
会社のことばかりでなく、自分の老後資金のことも考えたら、これは決して高くはない、といって安くもない、バランスのよい数字だと思います。
ただ、1000万円の報酬をとるというと、現実には難しいという方が多いと思います。
飲食店の利益がでる基準にF Lコスト60%以内というものがあります。これはF(フード)である食材費が30%、L(レイバー)である人件費が30%、合わせてFLコストを60%に抑えないと利益が出にくいということです。
例えば年商5000万円の飲食店での役員報酬1000万円をとった場合は、売上の20%。
役員報酬を1000万円とってしまうと、残り500万円で社員とアルバイトを雇わなければなりません。
これは非常に難しい、というより、現実的に不可能と言っていいでしょう。
10店舗まで多店舗展開に成功した場合はどうなるでしょうか。
全体の年商が5億円に拡大すると、役員報酬の1000万円は売上の20%から2%に縮まりますね。
役員報酬2%ならば残り28%で社員とアルバイトを雇用することができる。
極めて現実的です。つまり正しい多店舗展開することによって、初めてオーナーの役員報酬を増やすことができるので経営のリスクヘッジにもつながるわけです。
まとめ
繰り返しますが、多店舗展開にはメリットがあればデメリットもあります。
メリットだけのものもなければ、デメリットだけのものも存在しません。
多店舗化のメリットはいろいろとありますが、私の思う多店舗展開におけるメリットは役員報酬を1000万円以上取り、しっかり経営者個人の預金残高に内部留保させていくことと、そしてシナジー効果を意識した事業展開で、利益の最大化をはかっていくことだと皆さんには伝えております。
この二つの原則は、他の記事にも書いていますので、ぜひ正しい多店舗展開をして経営におけるリスクヘッジを図ってください。
- 多店舗展開とは
- 優秀なスタッフが効率よく育つには、個人の経験や勘に頼らないマニュアルを作成し、組織的なオペレーションを視野に入れる必要がある。さらに、店長やマネージャーなどのポジションを明確にすることも重要である。
新店を出すタイミングは、安定的に利益を計上し、黒字が維持されること、ピーク時が満員であることなどがある。1店舗目の赤字を複数店舗や新店舗で計上するマネジメントは危険である。融資を比較的安い金利で行っている日本政策金融公庫などは審査が厳しい傾向にあり見極める必要がある。
飲食店は商圏人口などで獲得できる市場に限りがある。開業後、商圏内で知名度を上げ、安定的な客足や売上が見込めるよう戦略を立て、業績を軌道にのせる。同時に人件費などのコストダウンも考慮し、リスクを分散させる必要がある。知名度は立地や物件だけが課題ではない。
コロナ禍では、テイクアウト・デリバリーへの展開も重要である。
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