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飲食店の多店舗展開に必要とされる7つの条件
飲食店の多店舗展開を軌道に乗せるために必要となる7つの条件って何だかわかりますか?
これは業種業態を問わないで成功する多店舗企業すべてに当てはまる経営のポイントです。
また弊社では年間で数社、フランチャイズ本部構築の支援をしていますが、その事業がフランチャイズ本部としてうまくいくのか、いかないかの判断でも使います。
この7つを高いレベルでクリアーしていれば、その後の多店舗経営がうまくいきますが、クリアーしないと5店舗化の壁を越えることも難しくなります。
この7つの条件とは、
- 営業利益率15%以上
- 投資回収が2〜3年以内
- 参入障壁が高く、撤退障壁が低い
- 差別化があり、競争優位性を持っている
- 出店エリアの拡大度、ドミナント出店が可能
- ノウハウの非属人性
- 再現性が高い、の7つです。
今回は飲食という業態の正しい多店舗展開における出店方法、開業のタイミング、資金計画、繁盛店の作り方、店長育成、食材調達方法、リスクマネジメント、融資判断、オペレーションの仕組み化、競合対策、居抜き物件の活用法、売上と利益とのバランスなど、このサイトで説明していきます。
営業利益率15%以上が判断軸
まずは第1の営業利益率15%ですが、これは多店舗化の出店費用の原資は、あくまでも既存店のキャッシュフローが原則という意味です。
つまり既存店が繁盛していること。行列ができていることです。
さらに2〜3年以内で初期投資や開業コストを回収していく上でも営業利益率15%が必須です。
つまり15%以上でないと金融機関に返済するキャッシュが生まれないからです。
その結果、当初の事業計画通りに支払いがだんだん厳しくなります。
またこの15%という数字はもう一つの意図があります。
それはもし仮に将来的にフランチャイズ展開していくうえでも必要最低限の数字目標になります。
なぜならフランチャイズビジネスは本部のノウハウを提供する対価として加盟店は本部にロイヤリティーを支払います
このロイヤリティーは金額で固定されているところもあれば、売上の何パーセントというように比率が固定されているところもあります。
比率の平均は、飲食業界では5%、介護で8%、スクール系では10%前後です。
この点から考えても、15%以上の利益が出ていないと、加盟店が本部にロイヤリティーを支払った後の経営が成り立ちません。
だから営業利益率15%が飲食店の多店舗経営するときの最初の条件となるのです。
次の2の投資回収ですが、現在は居酒屋をはじめとする飲食店の業態寿命が年々短くなっています。
だから開業コストや初期投資を3年くらいでできないと多店舗経営の旨味がでません。
またフランチャイズ本部が成功する鍵は、加盟店の成功です。
優秀なフランチャイズ本部を見極める基準のひとつが、同じフランチャイズオーナーが何店舗、多店舗化しているかです。
またどのくらいの期間で何店舗まで拡大して軌道に載せたのかは対外的に非常に重要になります。
具体的な数字でいうと、一人の加盟店オーナーが5年で3店舗、出店しているかどうかです。
加盟店は本部に加盟金とロイヤリティーを支払ってもいるので5年で3店舗の多店舗化ができれば、それだけ収益性が高いビジネスモデルの証拠なわけです。
この初期投資を2〜3年で回収できることが飲食店の多店舗展開するときの2番目の条件となります。
参入障壁をいかに高くしていけるか?
3の参入障壁が高くて、撤退障壁が低いことです。
最初はブルーオーシャン(競争が少ない血の流さない市場)でも、その事業が儲かっていると判断したら、競合が一気に入ってきてあっという間にレッドオーション(競争の多い市場)に変わってしまいます。
そのとき競合が強くなければ先行者の優位性はあり何とかできます。
しかし大手企業が参入してきたときは資金面や人材面で太刀打ちできなくなります。
ですので、競合が簡単に真似られないものを作っていく必要があります。
私的には集客ノウハウをいかに確立させていくかが重要だと思います。
次の撤退障壁とは、逆に事業がうまくいかないと判断したときに、すぐに辞めることができるかどうかということです。
ビジネスには絶対はありません。
だからどんなに計画をしっかり立てても、検討を重ねて出店しても、うまくいかないこともあります。
だからそのときに損切りできるかどうかが大事なのです。
飲食の場合は、居抜きで出られるかスケルトン状態に戻すのか、契約は普通契約か定借契約なのか、1年で撤退したときの除却損費はいくらになるのか?
これらを調べておく必要があります。
除却損とは固定資産を破棄処分したときに発生する費用のことです。
だから大切なのは出店するときに、もし事業がうまくいかなくて半年で撤退をせざる得ない状態になったときに撤退コストがいくらかかるのか、最初から計算しておいた方がいいのです。
これを私は出口戦略と呼んでいます。
出口戦略は出店戦略よりも大切になりますので、ぜひ社内で基準を構築してください。
差別化と競争優位性はどう高めていったらいいか
4番目の条件の「差別化と競争優位性」についてです。
最初にこの二つの言葉について定義したいと思います。
「差別化」とは、競争相手に対して自社のポジションを確立するために「意味のある違い」を打ち出す活動のことです。
「競争優位」とは、競争相手より「優れた価値」を提供したり、競争相手が「真似できない商品サービス」を磨き込んでいく活動のことです。
つまり星の数ほどある競合他社との違いを明確に確立させ、効率的に短期間で繁盛店を作っていけるかがポイントになります。
では差別化と競争優位性はどう高めていったらいいと思いますか?
私はこの問いに対して以下の5の質問をしっかり明確にすることだと思います。
- あなたのお店の特徴を2つあげるとしたら、ズバリどんなお店でしょうか?
- その特徴2つを、20秒以内で、直感的にわかるように説明すると?
- 20秒以内で説明しただけで、「ぜひ予約を入れたい」と頭を下げて、嘆願してくる顧客は、どのような顧客でしょうか?
- いろいろ似たようなお店がある中で、既存顧客は、なぜあなたのお店を選んだか?
- 同じような商品を食べられるお店がいろいろある中で、なぜ既存顧客は、あなたのお店を利用したのか? なぜ既存顧客のモチベーションは高いのか?
差別化と競争優位とは、結局はこの5の質問をひたすら考えることに尽きます。
ひたすら考えていく過程で、だんだんと他店との違いがわかってきますし、他店と比較してうちは何に力を入れていけばいいのかおのずと見えてきます。
飲食店オーナーの仕事は考えるシゴトです。
ですので、この5の質問を考えることからはじめてみましょう。
多店舗展開する最大のメリットがシナジー効果
5番目の条件は、「出店エリアの拡大度、ドミナント出店が可能か」というお話です。
多店舗化やチェーン展開の最大のコツはドミナント出店ができるかどうかです。
ドミナント出店とは攻める地域を特定して、その特定した地域内に集中して店舗を出店することを指します。
では、なぜ多店舗化やチェーン展開のコツがドミナント出店なるのでしょうか?
それは飲食店の多店舗展開する最大のメリットがシナジー効果だからです。
シナジーを働かせて経常利益率を改善することが多店舗化の最大の目的だからです。
そう定義しますと、管理コストや出店コストの削減、食材の調達から物流の効率化、店長・社員の育成から人材移動も含めてドミナント出店できるかどうかで、シナジーのかかり具合が変わってきます。
つまり、シナジー効果を一番に考えて多店舗化するなら、商圏は狭ければ狭いほどいいという結論になります。
商圏の狭さということで、コンビニを例に出してお話します。
現在のコンビニエンスの商圏は 一般には500メートル、3,000人と言われます。
正確には日本の人口が1億3000万弱なので5万店に迫る現在の商圏は平均2,600人になります。
次に、この数字を元に全国展開できる店舗数のおおよそを計算します。
例えばコンビニの商圏が26,000人ならば5,000店舗が限界になります。
26万人が商圏ならば500店舗までしか拡大できない計算です。
次にコンビニ以外の一般的なチェーン店の店舗数で考えてみましょう。
まず前提条件となるのはコンビニのターゲットは老若男女、日本人すべてがターゲットだということです。(外国人もいますが)
通常の一般的なチェーン店のターゲットの場合、その属性が絞られます。
ですのでコンビニの1/3と考えましょう。
そう考えますと30万人規模の商圏で約170店舗(500店舗÷3)がチェーン店の全国展開した時の限界店舗数になることが理解できると思います。
つまり商圏10万人に置き換えるならば約500店舗が限界になるのです。
つまり10万都市に1店舗出店できて全国に500店舗です。
和民などの居酒屋チェーン店が500店舗までしか拡大できなかったのはこの理由からです。
商圏が狭いビジネスの方が、全国に広がりやすい
ではなぜここまで店舗数にこだわるか?
ファーストフード店に4桁チェーン(1,000店舗以上)が多いのはなぜか?
これが冒頭で説明したシナジー効果の最大化です。
コンビニのような5万店あるときのスケールメリットと、500店のスケールメリットでは、どちらが仕入れ原価を安くすることができるか、ってことです。
あきらかに5万店の方が「規模の経済」の恩恵を得られます。
また別の角度からみて同一地域であれば管理コストや管理マネジメント、出店コストの削減、食材の調達から物流の効率化、店長・社員の育成から人材移動の効率化、そしてモチベーションの維持という点でみた場合も、5万店と500店では明らかにシナジーをかけられるのは5万店です。
だからこそFC本部の収益性という意味で出店エリアの拡大度と、ドミナント出店が可能かというのは非常に重要な要素になってきます。
つまり商圏が狭いビジネスの方が、全国に広がりやすく、しかもシナジー効果が働くので本部は儲かりやすいのです。
当然、ハコ(お店の大きさ)も小さくなりますから初期投資も少額になりますからね。
それでも商圏的にやっていけるということは収益性がいい証拠なのです。
ノウハウの非属人性
6番目の条件が、多店舗展開していくためには「ノウハウの非属人性」です。
とは言っても立ち上げ時は属人性で構いません。
なぜなら専門家でないと、いいビジネスモデルが創れないからです。
しかし、ある程度の店舗数になり、本格的に多店舗化を考えていくようになったら属人性から非属人性に移行していくための仕組みを構築していかなければなりません。
つまり、多店舗化とは専門家集団が作り上げた成功ビジネスを、専門家でなくても運営ができるようにカスタマイズして、それを大量生産するイメージだからです。
これをチェーン店は最新設備やIT化によって補っているところが多いです。
いずれにしても非属人的のオペレーションを構築できるかどうかがPOINTになります。
これを「チェーン・システム」と呼びます。
チェーン・システムとは「店舗運営の3大原則」といわれる「単純化・標準化・分業化」のことで、専門家に頼らない仕組みのことです。
再現性が高い
7番目の条件は「再現性が高い」ということです。
再現性とは、いつ、どこで、誰が、何度やっても同じ成果を出せることです。
そしてこれを構築するために必要なことが、体系化された「教育プログラム」と「訓練システム」になるのです。
なぜなら非専門家でも再現化することができなければ、多店舗展開は難しいからです。
ですから「多店舗展開には教育が必要不可欠」だと言われるのです。
チェーン全体のブランドイメージを維持するためには、本部ノウハウを一定レベル以上の水準で再現させる仕組みや仕掛けが必要です。
そしてこの機能を充実させるために必要になっていくのが、本部ノウハウの「標準化」と「見える化」です。
手順としてはまず、本部ノウハウを「マニュアル化」してから、このマニュアルに基づきながら「研修プログラム」を構築するのです。
この時テキストとして使用するマニュアルは、オペレーションの基本を「体系化」して「見える化」したもので、統一性を要求される同一業態の多店舗マネジメントにおいて、まさにバイブルになります。
近年、マニュアル化された店員の対応への批判などから、マニュアル化についての賛否両論がありますが、「マニュアル不要論」と混同してはいけません。なぜなら「再現性」=「マニュアル化」だからです。
以上が飲食店の多店舗展開に必要とされる7つの条件です。
是非これらの点を注意して、多店舗展開できる業態を開発していただければと思います。